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第37回みちのく会 山形大会レポ(3)


プレゼン続く。「一人一話」後半戦へと突入。(2011年2月26日昼下がり)


 もはやわたしの乏しい蛾力ではなかなかついて行けない。メモを取りながら目が回る。

 

クロメンガタスズメ

 クロメンガタスズメがミツバチの巣で盗蜜をするのは知られているところ。

クロメンガタスズメ

 千葉で巣の中から17頭の死骸が出てきたケース。

 従来は,盗蜜するのは♀が多いとされていたが,そうともいえなさそう。卵巣の成熟とも無関係なようである。

 巣の中で死んでいる蛾は横腹が食い破られていて,蜜を回収されている。

 ヨーロッパ産のものは化学擬態を指摘されているが,東洋種ではまだ未研究のようである。

 養蜂家と蛾屋との間には交流があまりなく研究が進まないというのは,部屋に戻ってからの会話。

 

 農家の方(かぶとえびさん)の発表。

スイカを食べる虫

 下の青2種は被害なし。ワタヘリクロノメイガはキュウリばかり,ウリハムシは未分布。

 スイカの葉を食べる蛾はいない。ヨトウムシさえ食べない。

 最大の害虫はオオタバコガ。実の表面を地図のようにかじっていき,商品価値を失わせる。柔らかい幼果には穴を開けて潜る。

 オオタバコガはピーマン・ナスなどのハウス野菜の害虫である。越冬しているらしく,5月には幼虫が出てくる。「煙草」というよりも「ヤサイカジリムシ」みたいな分かりやすい名の方が良さそう。

 

 大発生の話。

クスサン大発生

 クスサン。クルミの木に発生。2本で300頭以上いた。クルミを食べ尽くした後,クワなどの他の木へ移動。農薬がよく効き,秋に成虫は見られなかった。

 

タケノホソクロバ大発生

 タケノホソクロバ。昨年は9月にも発生しているので,年2化の可能性。

 

オオタバコガ多発生

 オオタバコガ茶色の個体と緑の個体がある。11月のものはすべて茶色。

 タケノホソクロバは大陸からの輸入竹についてきたものでは,というコメント。

 

 キイロエダシャクとナンカイキイロエダシャクの分類について。

キイロエダシャク

 もともとがホシシャクだったりシャチホコだったりする面倒なグループ。

 キイロとナンカイキイロとを外見から区別する方法(顔面と脚)が開発されて,

キイロエダシャク

 従来キイロだと思われていたものから,ナンカイキイロがどんどん報告され出した。となると,そもそものキイロのタイプも怪しくなってくる。

キイロエダシャク

 タイプ標本で現存しているものは北大の1つだけで,これがナンカイキイロだったりすると,ナンカイキイロがキイロになり,ナンカイキイロエダシャク Doratoptera amabilis の名称はシノニムとなってしまう。タイプは未確認(ナンカイ命名者としては複雑な……)。

 

 豊田市における蛾の調査に糖蜜を用いてみた(夜明るくて灯火を使えない)。新造成林・雑木公園・混交社寺林を比較した。

 『矢作川研究』のバックナンバーがPDFになっている。

 http://yahagigawa.jp/3_1_y_kenkyuu/index.html

 

 昨年の話題の続き。

 ウスバミスジエダシャクについて,湿地の,翅の丸い小型のものは別種らしい。ペアリングは今年も失敗している。

 非湿地のものは飼育が難しい。湿地のものはハンノキで容易。ところが幼虫はまだ採集できていない。

 

 ヨツボシホソバには交尾器に狭い・広いの2つの型がある。中間形はない。成虫の外見には差を認めることはできない。

 岐阜での標本の交尾器と分布状況とを調べると,それぞれの♂♀の組み合わせも一致している。

 ヨツボシホソバは2種混合の可能性がある。

 最も盛り上がった報告。報告者は昨年もスゲドクガの新種を報告している。「Mさんの所は呪われていて,異常な蛾が発生するんだよ」「怪しい交配をしているのでは」というツッコミ。

 「これだけゲニ(交尾器)が違えば別種だよね」「岐阜南部は独立した特殊な植生の地域だから」のフォローも。

 蛾類学会長コメント。「シャチホコでは春夏でゲニタリアの変化するものがあるが,これは6月で共通。北海道をはじめ他地域では狭い型ばかりである。うーん…」という具合で別種かどうか悩んでいる様子だった。

 ※3月3日,参加者に会長からメール。「ロシアのVladimir氏から連絡があって,ゲニの広い型は Lithosia yuennanensis (Daniel, 1952)であるとのこと。中国の陝西から雲南まで分布しており,東限は未確定」。

 これに対してMさんは「帰ってから更に調べると神奈川産のものとたくさんの岐阜産が出てきた。〔=分布域はかなり広い可能性〕」。

 これからウンナンエーンシスの分布調査が始まるのだろうか。面白いなあ。

 

 「一人一話」は今回は何とか予定時間内で完了。

 

 夜の宴まで人々は部屋で休んだり,風呂に入ったり。わたしは部屋で,入れてもらったお茶を飲みながら同室のOさんからアケビコノハの幼虫の話を聞く。

 

 下画像は「札幌カラス研究会」のブトボソさんからの頂き物。

アケビコノハ幼虫

 何でもありのような気がするんだけど…(我ながらいいかげん)。


(4)へ続く

 

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