第34回みちのく会札幌大会私的報告(3)
様々なレクチャーあれこれ。(08年3月1日,18:30〜)
さすがにがいすとさんとKUMAさんは話題が尽きない。その合間にこちらがあれこれ質問。
- ハマキガは夜に灯火に来ないものが多いのか?
- 来るものは来るが,来ないものは全く来ない。ある種のハマキは完全な昼飛性でなかなか採れない。一寸野虫さんのサイトで見たことがあって,あれは間違いなく昼間の撮影。
- 灯火について。
- 街灯やライトには初年度には多くの虫が来るが,年々減少していくようだ。街灯がトラップになって減少圧をかけていると思われる。舗装道路もよろしくない。周囲の乾燥が進むのだろう。砂利道の方が好ましい。
- ゴミムシなどの甲虫を見分ける時の目の付け所は?
- ずばり点刻である。
- 北海道のフユシャクのシーズンは?
- 1月2月は寒い。3月の暖かい日がチャンス。柳が芽吹く4月になるとそっちへ行ってしまう。
- 糖蜜は樹を痛めないのか?
- 木肌の色が変わるという話もあるが,大丈夫だろう。嫌なら電柱でもいいし,脱脂綿を用いてもいい。
etc.……。
その他,「今はソフトインセクトである」「ハルニレの枝に付いているあのグネグネは何の幼虫のカプセルだろう」など.素人のわたしには本当に有益な小一時間となった。お二人には深く感謝。
標本の宴。(08年3月1日,20:00〜)
場所を変えて2次会。飲みながら蛾の話をするのは同じ。まずオークションがある。
小さなテーブルに,蛾の標本の入った箱や密閉容器,あるいは綿に乗せられた沢山のオサムシやセンチコガネが並ぶ。せり人である会長の声が響き渡る。
わたしでも分かるムラサキシタバ。北日本では珍しくない。これは最低価格50円からスタート。「ムラサキシタバに失礼だ」との声がかかったりする。
こちらは確か東南アジアのメイガの詰め合わせセット。
今回の目玉は「ヒダカミツボシキリガ」(希少種)を含むミツボシの3点セットだったが,これは宮城から来られた方が比較的安値で落札。ブツを横からのぞき込んだが,普通のエゾミツボシキリガとどう違うのかよく分からなかった。
標本になった蛾はどれもびっくりするほど小さい。生きている蛾はどれももっと大きかったような気がする。死ぬと小さくなるのか.それとも日頃ディスプレイで拡大するのに目が慣れているからなのかは分からない。
でも野外で見た蛾だって,もっと大きかったはずだ。ムラサキシタバもミツボシキリガも,わたしの記憶の中ではそうだ。
翅は展翅者の技量を反映して,おろし立ての紙のように真っ直ぐ,平らに,乾燥して延びている。人工的な造りもののようである。生きた翅が薄暗がりに見せる陰影がそこにはない。
もしもわたしが標本を作る時があるのなら,その時,わたしにとって蛾の標本というのは何なのだろう。わたしにとって蛾の標本をつくっているわたしとは何なのだろう。
こういう気がしている.おそらくわたしは標本を作るほどには蛾が好きではないと。
どうせ学問には関われない。虫への関わりの裾野になるのがわたしの役割だと思う。収集にも縁がない。完成目指して何かを集める時間は人生にはもう残っていない。
オークションはトントンと進み,その後はまた懇親会の続き。どこからともなく標本箱が幾つも出てきて,それぞれに人の輪ができる。
はるばる岐阜からやってきた方がミクロ蛾の鑑定を専門家にお願いしている。「ミクロ分科会が始まったぞ」と茶々が入る。
別の輪では標本箱に50頭以上のテングイラガ。日本のテングイラガは4種に分類可能らしいという。どれも同じに見える。そもそもわたしはテングイラガは初見。
小さい蛾はのぞき込んでも分からないので,シャチホコガの輪へ。サハリンや中国の蛾の標本。こちらは見覚えのある模様である。セダカシャチホコなんてほとんど同じ。それでもある人がマルモンシャチホコを指さしながら,これは日本のものとは違うと解説する。
一時撤退,後ろ髪を引かれつつ。(08年3月1日,10:00〜)
あっという間に夜10時を過ぎる。
わたしは札幌駅裏のホテルに泊まるのでそろそろ退散。抜け出す。3月の札幌の夜はもうあまり寒くない。
ホテルで有料チャンネルを見る。「乳まつり」らしい。見れば見るほど,あれらは授乳器官でしかない。蛾の方が面白い。
がいすとさんから貰った昆虫誌の抜き刷りを読みながら寝てしまう。
【報告(4)へ続く】
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