07年9月23日。苫小牧市高丘,緑ヶ丘公園。
トップ画像を毛虫にした。検索してあちこちの写真ブログを見ると,リンゴドクガのこの幼虫は結構な人気があるのである。閑古鳥サイトとしては,乗らない手はない。
純ガーデニング系の人と農家の人を除けば,「人々は毛虫が好きである」というのがわたしの結論。さもなければ,あんな長毛種の犬猫が受け入れられるはずがない。毛のふさふさした蛇がいれば,人々は争ってペットにするやもしれぬ。画像掲示板でも,毛虫の時のスレッドはよく伸びる。
リンゴドクガの幼虫はご覧の通り,非常に美しいレモンイエローの毛虫。画像はまだ若い幼虫のようだ。成長とともに毛は一層立派になり,レモン色の「長たわし」状になる。
ぜひとも「みんな蛾」の「リンゴドクガ」の項の幼虫画像(ページのずっと下の方)を満喫していただきたい。
同日同場所。同個体。
背中の毛束(歯ブラシ状と表現される),尾の旗立て。ドクガ科の幼虫によく見られる特徴。
リンゴドクガに負けず,アカヒゲドクガの毛虫(当HP「アカヒゲドクガ」内画像参照)も大層見事だが,なるほど同じCalliteara属だ。
同属のシタキドクガなどは,これはぜひとも画像を見て貰うしかない(「みんな蛾」の「シタキドクガ」の項参照)。とはいえ,カリテアラ属の毛虫がすべて素晴らしいかといえばそうでもなくて,スギドクガは茶色の毛束に見るべきものはあるが,普通の毛虫の域を出ない(「みんな蛾」の「スギドクガ」参照)。
「リンゴドクガ」といっても食樹はリンゴに限らず,同じバラ科のサクラでもいいし,ヤナギでもカエデでもコナラでも食べるらしい。誤解を与える名前だ。リンゴ果樹園の主要害虫と思われたら気の毒である。
学名の方はCalliteara pseudabietis。属名については拙ブログ「yyzz2;虫撮記【虫画像・他】」の「2008-01-13記事」参照。
種小名は「偽+樅(もみ)」。おそらく,そのような樹木があって,そこから命名されたのだと思う。
追記!:サイト「MothProg」のがいすとさんから,ありがたい間違い指摘メール。リンゴドクガの種小名pseudabietisは,スギドクガ(旧学名Calliteara abietis)のpseud(偽)だろうとのこと。abietisを「日本産昆虫学名和名辞書 DJI」で検索するくらいのことはやっていたのだが,旧学名とまでは気がつかなかった。
調べ直してみると,『蛾類大図鑑』の「リンゴドクガ」の項目のすぐ上に,「スギドクガ Calliteara abietis」として記載されていた。完全な見落としである。キャリアの不足ともいえるし,単に間抜けだともいえる。
いずれにせよ,がいすとさんには足を向けて寝られない状況である。とはいえ,わたしは北海道在住なので「北枕」にさえしなければ大抵は大丈夫である。
そろそろ毛虫から離れて成虫へ。
07年6月16日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。♂個体。前翅長20mm。
二十歳過ぎれば何とやら。リンゴドクガもアカヒゲドクガ同様,羽化してしまうと地味な蛾である。
同日同場所。同個体。
リンゴドクガについて,保育社『蛾類図鑑(下)』では次のように記述される。
♂のなかには前翅の中央部が黒化したものもあれば,この部分が殆ど黒色でない個体もある。♀は白色に近く,2本の横線をもつが,個体によってはこの横線(特に外横線)が後半消えているものもある。(p.22)
個体差がかなりありそう。講談社『蛾類大図鑑』では表現がやや押さえられる。
(…)翅は全体に白っぽく,前翅の2横線が明瞭.(…)♂はしばしば前翅の2横線のあいだがいちように黒くなる.(p.268)
♀については特記の要なしと判断したものか。
その♀はこちら。
07年7月2日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長28mm。
ドクガ科は♀が一回り〜二回りくらい大きいのが基本。問題の外横線はこの個体ではかすれている。
○『原色日本蛾類図鑑(下)』;保育社
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社
(08/01/05初稿,01/07追記,02/04改稿)
yyzz2;虫画像 虫よもやま