ニセツマアカシャチホコ Clostera albosigma curtuloides Erschoff

シャチホコガ科 Notodontidae

ニセツマアカシャチホコ

06年6月22日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。

■「エビ物体」出現

さて,これをどう見るかというと「未確認エビ物体」である。衣まで付いている。天ぷら屋から危機一髪,脱走してきたところ。


与太はさておいて,もちろん蛾である。横から見て種明かし。

ニセツマアカシャチホコ

同年同日。


ニセツマアカシャチホコである。前翅翅頂(テント型なので下の方が翅頂である)の褐色部分が白線3の字の境界内に収まっているのが本家ツマアカシャチホコとの分かれ目。本家ははみ出す。

この褐色が夜の暗さに溶け込む。クリーム色の部分だけが浮き上がって見える仕掛けだ。日中でもちょっとした木陰なら枯葉がぶら下がっているように見せる効果がある。

翅のコントラストを利用するシャチホコガは他にも何種類かあって,有名なムラサキシャチホコが最右翼。ナカスジシャチホコなども似たような効果を上げている。

■ニセツマアカシャチホコの学名

学名はClostera albosigma curtuloides

属名は「紡錘(形)」。種小名は「白いΣ(シグマ)」+「戦車の形のもの」。

和名は「ニセ」呼ばわりされているが,それだって個性。個人的には嫌いではない。ちなみに本家の学名はClostera anachoreta 「隠者」である。

ついでだから英名も。「UK Moths」を調べると,Clostera属は「Chocolate-tip」とよばれるらしい。「chip」も「tip」も同じらしい。

ニセツマアカシャチホコ

同年同日。それにしても良く出来ている。シャチホコガはしばしば面白い。横から脚がちょろっと出ている。


これは別個体。電柱にとまっているところを真上から….

ニセツマアカシャチホコ

08年05月25日。前翅長12mm.苫小牧市字樽前錦大沼公園アルテン。

まだ揚げていない。粉をふったところまで。

■図鑑から

世界は図鑑である。さあ図鑑で勉強。講談社『蛾類大図鑑』。

前翅の斑紋は前種(引用者註:ツマアカシャチホコ)に似るが,翅頂付近の白色条は常に安定した識別点となる。日本産の本属中では唯一の東アジア特産種。北海道から本州中部の山地部にわたって分布,四国では中央山地で見出されているが,本州西部,九州の山地には記録がない。北海道では年2化,5−6月および7−8月に出現,蛹で越冬する。本州でもほぼ同様と思われる。

(p.627)

寒地系の蛾らしい。道理でネット上に情報が少ないわけだ。こういう蛾は当HPでは優先。


北海道ならではといった虫もいないわけではないが,それでも虫の種類では北海道は内地に比べて3:7くらいで不利のような気がする。頑張らないと。

○『日本産蛾類大図鑑』;講談社


(08年02月06日改稿)

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