06年7月21日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長15mm。
「ニセ(偽)」とか「モドキ(擬)」とかを名前に背負った虫は結構いて,「みんな蛾」で検索してみると92種ヒットする。このクワゴモドキシャチホコもその中の1種。
そもそも「モドキ」って何のことだろうかと調べてみると,動詞「もどく(非難する,抵抗する)」に由来するらしい(金川 欣二☆言語学のお散歩(マックde記号論)☆ Rideo, ergo sum. 「パンティ学・入門〜語源学・仮入門」による)。
例えればアンチキリストの「アンチ」みたいなニュアンスだろうか。だとすれば,そう卑下したものでもない。場合によっては応援したくなるではないか(わたしはいつだって少数派と共にありたいと思っている)。
ただ頭が痛くなってしまうのが,このクワゴモドキシャチホコが,どうしてクワゴにモドいてしまうかである。だって永遠のライバルたる「クワコ」はこんな蛾である。
06年9月14日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。
何を張り合いたいのか全然分からない。スタイルが違いすぎる。わたしはクワコが翅を閉じているのを見たことがない。翅の模様も別路線。どちらも茶色だけど見た目の質感は全然異なる。腹の反らし具合は… やっぱり関係なさそう。幼虫の姿も食草も完全にすれ違っている。
結論:やっぱり無茶なネーミングである。
06年7月14日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。
上から見るとこんな感じ。
それじゃあ学名はどうなっているかというと,「Gonoclostera」が「gonos産物・子供+klôstêlつむ(紡錘)(型)」(^は長音)。Closteraというシャチホコガの属があるから(ツマアカシャチホコの類),「クローステーラ属の子供」という意図なのだろう.
「timoniorm」は「(人間嫌いで有名な)ティモンの」である。隠者のイメージと見える。和名よりは真っ当だと思う。
06年7月14日。苫小牧市錦岡。
講談社『蛾類大図鑑』から。
触角は♂♀とも先端まで両櫛歯状,その枝は♀では短い。複眼には毛を密生する。前翅外縁は翅頂の下で小さく内湾し脈M1付近で鋭い角をなす。1属1種。本種は外形的にはClosteraと共通点が多いが,♂の尾端には毛束を持たない。(p.627)
話は戻るが,翅頂あたりのえぐれ具合がクワコに似ているということなのか? 実感がないなあ。
標本を眺めて考えた命名とすれば,うなずけないこともないんだが。真理はそんなところにあるのかもしれない。
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社
(2008/02/05,09/13改稿)
yyzz2;虫画像 虫よもやま