06年6月5日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園。前翅長15mm。
カトカラ亜科(シタバガ亜科)の蛾にもシタバからアツバ,クチバまでいろいろあって,とにかく多様で絵合わせが大変である。ヤガっぽくて分からないときは「困ったときにはシタバガ亜科」が結構有効だったりする。
ヤガ科のこのあたりは分類学的にはごたごたした所で,今後どんな新分類になってくるか予断を許さないらしい。
「シタバ」だったら後翅に特徴があるのだろうと見当がつくが,「アツバ」と「クチバ」はどう使い分けているのかよく分からない。アツバには下唇鬚が長く突き出ているものが多いようだが,それは「羽」には無関係である。
それはさておいて,ユミモンクチバは例によって地味な小さな蛾。
模様はなかなか面白い。翅の基部から翅頂へとカーブする黒い帯に白い帯がまとわりついている。美しいのかどうかは難しい。似た感じの蛾ならギンスジエダシャクの方がずっと輝いている。
07年8月4日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長15mm。
ギンスジエダシャクの方は分からないが,このユミモンクチバは「朽ち羽」の名前通りに枯草のスタイルである。
この蛾には草地で足元から飛び出すイメージがあるらしい。ならば地味でも仕方ない。保育社『蛾類図鑑』では次のような記述がある。
燈火採集で得られたことはないようで,昼間,草むらからとび出すのをとらえることができる。(下巻,p.116)
上の画像はいずれも灯火下のもの。だから灯火にはやってくるはずである。6月といえば,昼間飛び出してくるのはまずはツトガの類,次はシロアヤヒメノメイガが相場である。わたしはまだユミモンクチバを昼間に見たことはない。
いわゆる普通種とは違って,やや珍しい部類に属する蛾らしい。前掲書では,
各地で得られるが,あまり多くない。(下巻,p.166)
また,講談社『蛾類大図鑑』。
日本では北海道から九州にわたって本土域に産するが,産出は局地的。(p.850)
実際,2000年に茨城県でこの蛾が希少種指定になっていたりする(神保宇嗣「都道府県別レッドリスト」による)。蛾の生息状況についてどのくらいまで把握できているかは難しいところだろうが,珍しめの種であることは確かなようだ。日頃北国住まいをかこっているHP管理人としては少し嬉しい。
07年8月4日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。同じ個体。
学名はMelapia electaria。
属名の"Melapia"は,おそらくこの蛾の旧属名"Pelamia"のアナグラム。
種小名は electus 「選ばれた」に,接尾辞の -aria が付いたものだろう。意味はあまりないと思われる。
○『原色日本蛾類大図鑑(下)』;保育社,1971
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社,1982
(070818初稿,080210,0908014,100612改稿)
yyzz2;虫画像 虫よもやま