06年8月13日。苫小牧市高丘,緑ヶ丘公園。バックが真っ暗だが朝の9時。
要するにご覧の通りである。小さい。前翅長は5mm前後(この時の計測では4.5mm)だから横幅は1cmを切る。
カメムシを探していて見つけた。腰の高さくらいの葉の裏である。うずくまって体をねじっての苦しい姿勢で撮影開始。風で葉が揺れてピントが合わないやら,蚊の羽音が聞こえるのだが追う余裕がないやらの生き地獄のような撮りになった。画像の時間付けを見ると5分間で10数枚撮って力尽きている。
近づいて,さらに拡大。
同年同日。
帰宅後,同定作業。楽しくもしんどい時間である。
今だったら顔つきからヤガ科も候補に入るのだが,当時はまだまだ。スタイルからまずフタオガを探してハズレ 。次にシャクガを渉猟してダメ。他の蛾まで手を広げて,「みんな蛾」も講談社『蛾類大図鑑』も北隆館も保育社も図版を舐めるように見たがダメダメ。
ギブアップ(TДT) 。「*--蛾飢道談話室--*」にSOSした。ほどなく「ちょう・がのずかん」「蛾の掲示板」のMatszさんから「シロエグリコヤガ」との救いの手が。ありがとうございました。
すごいものである。どうしてこんな蛾を知っているんだろう。
まずは学名調べから。
属名は「holo完全な+cyiptos隠れた,謎の(スーパーマンで出てくるクリプト何だかと同じ)」。
種小名は「ウスリー地方の」。ラジオで「気象通報」を聞いていた子供にとっては「沿海州」のほうが馴染み深い。
同属にベニエグリコヤガがいるが,そっちは二回りほど大きいようだ。
この蛾,保育社『蛾類図鑑』には記載されていない。あれれ。
北隆館『昆虫大図鑑T』。図版は原寸大なので小さすぎて何だか使えない。
前種(引用者註:ベニエグリコヤガ)に比べて遙かに小さく,翅形もやや細長い。体翅白色,前翅はごくうすい褐色をおび,白色の内横線と,亜外縁部のやや幅広い白色帯をのこす。その外方はやや濃い褐色をおびる。後翅は白色で,中央部及び外縁にごくうすい二重の褐色帯をもち,中室端に小さい暗色条をもつ。(…) 本州(高尾山など)・四国(足摺岬)・九州(彦山)でとれている。国外の分布:ウスリー。(p.138)
なかなか渋い所で採集されている。
07年8月9日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長4mm。
講談社『蛾類大図鑑』はもっと簡潔である。やっぱり図版は小さくてダメ。
前・後翅ともに幅狭く,白色ないし灰白色。斑紋は淡い黄褐色。後翅の横脈紋が目立つ。沿海州および日本に分布。北海道から九州に至る本土域に産し,(…)。7−9月に出現。幼生期は不詳。(p.806)
採集報告の積み重ねを感じさせる記述。
「幼生期は…」ということは,食草さえ分かっていないらしい。幼虫は数ミリの芋虫の予感。終齢で10mm強だな。捕まえて産卵させて,付近の植物質のものを片っ端からあてがって…。歩留まりの悪そうな研究である。
○『原色昆虫大図鑑T』;北隆館,1965
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社,1982
(08年02月16日改稿)
yzz2;虫画像 虫よもやま