06年6月22日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園。前翅長15mm強。
オオクワゴモドキ。クワコのモドキは2種いて,もう一種がクワゴモドキシャチホコ。当HPですでに採り上げている。「モドキ」が決して恥じる必要のない呼称であることはそちらを参照して欲しい。
オオクワゴモドキはなるほどクワコに似ている。同じ科なので当然といえば当然だが,食草は全く違う。こちらはカエデ喰いである。食草としてはクワよりもカエデの方が有利だと思うのだが,発生数ではオオクワゴモドキはずっと少ないようである。クワコなら夏頃から晩秋まで毎晩のように出現するのに対して,オオクワゴモドキは年に1,2回というところ。
北隆館『昆虫大図鑑T』を見ると,クワコについて「東京付近では年3回,6月・8月・11月に発生するが,発生は不揃で,中には年2化のもの,又は1化に終わるものもあるという」(p.172)とのこと。苫小牧では年2化という感じがする。
対するオオクワゴモドキは,わたしは苫小牧では6月にしか確認していない。繁殖力で後塵を拝している模様だ。
ちなみに「オオ」である訳でもない。サイズは同じくらい。もう少し頑張って欲しいのだがどうにも仕方ない。そういうポジションの蛾である。
07年6月22日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長17mm。
学名はOberthueria falcigera。
属名は人名由来。どうやらフランスの蝶学者オーベルテュール(1845-1294)(平嶋義宏『新版 蝶の学名』九大出版会から)に献じられたものらしい。この人にちなむ蛾や蝶は少なくない。
種小名は「鎌を持つもの」。前翅頂の形からと思われる。直訳すれば「カギバ」が妥当だろう。でもすでに,この科には「カギバモドキ」なる蛾がいたりする。これも最前線には立てない名称の蛾。不遇な科である。
同上。同個体。
神保宇嗣「List-MJ 日本産蛾類総目録」の「新体系」では,このオオクワゴモドキやカギバモドキは,クワコとは亜科が分かれてPrismostictinae類(亜科)に分類されている。
それなら「プリスモスティクティナエ」とはどういう名かといえば,「角柱(プリズム)の斑」である。これはスカシサンだ。画像を見れば分かるように,前翅の先に透かしが入っている蛾である。
どうやら,ここでもオオクワゴモドキはトップを取れなかったようである。
なにせ北海道にはカギバモドキもスカシサンもいない。オオクワゴモドキはしっかり分布している。いざとなればオオクワゴモドキは北海道でクワコと思う存分戦ってもらえばいいのである。何をどう戦うのかは彼らに一任する。
○『原色昆虫大図鑑T』;北隆館
(07年12月16日記)
yyzz2;虫画像 虫よもやま