07年8月20日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長22mm。
初夏〜初秋の蛾である。
オビカギバの学名はDrepana curvatula acuta。属名は「鎌」から。
カギバガ科のDrepanidaeを代表する属である。翅頂の曲がった,特徴的な翅の形を表現していることは言うまでもない。カギバガを示す英名の「hook-tip」は「フックの先」。和名の「鉤羽」もいい名だと思う。
日本では,残念ながらDrepna属はオギカギバ1種のみ。
種小名は「少し湾曲した」,亜種名は「鋭い」である。まず無難なところ。
どうにも地味でうだつが上がらない印象があるが,こうやって大写しにするとカギバガだって,なかなかに美しい。豪華さはないとはいえ,栗色の和紙の味わいがある。
ところで,蛾はしばしば,前翅と後翅の横線を連結させてとまる。おそらく,それが一番楽な翅の開き加減なのだろう。このオビカギバも,「何となく」は線がつながっている。
左:06年6月29日。未計測。右:06年9月11日。21mm。いずれも苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。
左画像は連結していて当然だが,右画像を見るとトップのとは開き具合が少し違う。それでもあまり支障はなさそうだ。あまり幾何学的正確さを求めないタイプと見た。
下翅を少し重ね合わせるのがマナーである。
保育社『蛾類図鑑』は次のように♀♂を記述する。
触角は♂♀とも両櫛歯状であるが,♀の枝は短い。 (下巻,p.3)
他方,講談社『蛾類大図鑑』ではこう。
触角は♂♀とも櫛歯状だが,♀の枝は非常に短い。 (p.414,強調引用者)
「図鑑読み」としては記述のわずかな差異・ゆらぎが気になるところ。
同上,同個体。
おそらく,このぐらいで♀だと思われる。胸背の毛が思いのほか長く,暖かそうである。翅を動かす筋肉を冷やさないようにしているのだろうか。
顔が横に面長だとか,単眼がないだとかが分かる。口吻は見えないが,図鑑によればいちおうはあるらしい。
こちらは♂。
06年8月24日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長18mm。
文句なしの見事な櫛歯。翅以外の,触角や表情に眼がいくのも蛾撮りの面白さの要素である。
ところで,この個体でも後翅後角が重なっているのが,遠目に見えている。
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社
○『原色日本蛾類大図鑑(下)』;北隆館
(2008/01/28)
yyzz2;虫画像 虫よもやま