06年8月16日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長15mm。
ほとんど話題に上がらない,地味なマイナーな蛾。
残り物には福がある」とか「ゴミの山からおかんのヘソクリ」といった慣用句があるが,たいていはハズレである。どうしてわざわざマエキカギバという蛾を取り上げるかといえば,結局は「そういう性質のHPである」とか「管理人の人間性がゆがんでいる」としか解釈しようがなさそうだ。
せいぜい前向きに考えても,「塵も積もれば」と言うか,「ツモはほんとはピンフにならない」程度。
実際,マエキカギバは図鑑を読み比べても引用してみたい記述が何にもない。
例えば,北隆館『昆虫大図鑑T』。
触角は前種とだいたい同じ(引用者註:ヤマトカギバ。「♂で櫛歯状,♀で絲状」。それにしても「だいたい」なんだなあ。(ノД`) )。前翅長:14〜18mm。4月から9月の間に出現し,山地平地に多い。 (p.175,強調引用者)
「晴れ時々曇,ところにより雨」みたいなもので,良心的だがさっぱり特定できない記述である。いつでもどこでも沢山いる個性の乏しい蛾であることはよく分かる。いやはや。
学名はAgnidra scabiosa。属名の「アグニドラ」は歴史上のインドの王の名前。命名はMooreによるものであって,彼のつける学名はしばしば難解である。これなどはまだ分かるからよい。
種小名「スカビオサ」は「疥癬の」。皮膚病だ。疥癬については,「岩手県医師会ホームページ」の「疥癬」が詳しい。前翅中央に散在する紋からの連想だろうか。ひどいネーミングである。
せっかくだから,疥癬模様のアップ。病気に見えないこともなし,じっと見ていると痒くならないこともない。
07年8月20日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。
せっかくだから,その全体図も。
やっぱり皮膚病的かもしれない…。正面からも1枚。
同日,同個体。
この蛾は本土に分布する原名亜種であるAgnidra scabiosa scabiosa(何も重ねなくても… (TдT) )の他に,日本では対馬,大陸では朝鮮・中国,台湾にfixseni亜種(例によってどこが違っているか分からない)がいる。こっちの亜種名は人名フィクセンからである。この人の名付けによる蛾や蝶は結構いたりする。
fixsei亜種の方がネットでは情報が多い。例えば台湾のサイト「驚奇山行」では「乱斑鉤蛾」として取り上げられている。この名前の方が,和名や学名よりも常識的な視線に支えられていると思う。
せっかくだから「yahoo!翻訳」にかけてみよう。中国語と台湾語とは厳密には違うのだろうけど無視。
註:冊は1種に属して、前後の翼黄褐色、前の翼のの脈カ所は8−9の個の薄い灰色の色の楕円の斑が弧状の紋を呈することを配列して、中室内に1個の白斑がなおあって、後の翼中央には8−9の個の斑の聚成一団がまたあって、これは命名することの由来とする。幼虫宿主の于の楢、栗などの植物。
なるほどねえ。ほぼ了解。記述のベースは講談社『蛾類大図鑑』(p.413)であるようだ。
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社
○『原色昆虫大図鑑T』;北隆館
(2008/01/27改稿)
yyzz2;虫画像 虫よもやま