07年5月28日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長25mm。
苫小牧は海辺の土地なので,内陸部のようにやたら冷え込んだり,やたら蒸し暑かったりはしない。基本的に寒暖が安定している。そういえば聞こえがいいが,要するに年中うすら寒い。だから春の訪れも遅い。桜の開花だって札幌より遅れて,たいていはゴールデンウィークには間に合わないようだ。
ヒメカレハはそういう春に時間を合わせて現れる蛾だ。春一番の白っぽいシャクガにそろそろ辟易し始める頃,ヒメカレハの淡いオレンジ色は目に嬉しい。
このような下翅がはみ出した状態でとまることから,このタイプのカレハガは「Lappet」と呼ばれるらしい(「UK Moths」による)。ラペットというのは,「帽子のつば」とか「耳たぶ」とかを意味する語である。欧州にはヒメカレハそのものはいないが,そっくりな近似種のPhyllodesma ilicifoliaがいて,「small Lappet」。もちろん本家カレハガに対してsmallということである。
下翅がびらびらとはみ出した蛾には,他にシャチホコガがいる。シャチホコガも始めて見る人には結構インパクトを与える蛾だが,それでもまだ蛾だと分かる。一方,カレハガは蛾に見えない可能性が高い。
上から見るとヒメカレハはこうである。
07年5月28日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。同個体。
何がどうなっているのか,とっさにはのみ込めないに違いない。蝶のイメージしか鱗翅目に持っていないのなら尚更である。とまる時に後(下)翅を前方に引っ張って,その上に前翅を山形に無理に畳むとこんな具合になる。
このはみ出しによって,擬態度がどの程度+αされるかはわたしにはあまりピンとこない。
06年5月7日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長20mm。前個体より一回り小さい。
「一般に♀は大きく,触角の櫛歯が♂より短い(講談社『蛾類大図鑑』(p.582))であるから,1・2枚目画像が♀,3枚目画像を♂と見なしていいと思う(触角はここに貼らなかった画像で確認)。
分類上いろいろと動いている蛾であるが,学名は今はPhyllodesma japonicus japonicus。「葉っぱ+束ねられた/縛られた」+「日本の」+「日本の」である。日本種とはいえ北方系で,分布は北海道・本州ということである。食草を含めた幼虫の生態は分かっていないらしい。蛾には未知の領域が沢山残されているから面白い。
06年6月7日。北海道苫小牧市樽前,錦大沼公園。
これは地面で翅をばたつかせているところを撮ったもの。かなり感じが違う。これなら普通の蛾である。というか,もともとが普通の蛾なのだが。
これはしばらくHPのトップを飾っていた画像。せっかくなのでここに転載しておく。
○『日本産蛾類大図鑑』;講談社
yyzz2;虫画像 虫よもやま