エゾカギバ Nordstromia grisearia (Staudinger)

カギバガ科 Drepanidae  カギバガ亜科 Drepaninae

エゾカギバ

07年8月28日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長12mm。

今のところ,苫小牧では6〜9月に確認している。2化(晩春と夏後半)の可能性があると思っている。

■エゾカギバとヤマトカギバ

実は同定にあまり自信がない。類似種に「ヤマトカギバ」という蛾がいて,類似種だけあってさすがによく似ているのである。

両者の外見はほとんど同じ。ヤマトカギバについては「みんな蛾」の「ヤマトカギバ」の項をご覧いただきたい。典型的なカギバガ型,茶色とオレンジのセットになった美しい中横線と外横線。

あえて言えば,ヤマトとされている蛾の方が白っぽいような感じがするし,そのことで区別できると記されているサイトもある。ただ,色の濃淡は個体差があったり,撮影時の光の具合に左右されたりするので決め手にはならない。下の個体はトップ画像に比べて,白っぽいとまではいえないのだが明らかに色が薄い。さて,どっちだろう。

エゾカギバ

07年6月5日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長17mm。

■図鑑では

手持ちの図鑑を調べてみる。まず保育社『蛾類図鑑』の「やまとかぎば」の項。

近似種エゾカギバ(N. grisearia Staudinger)は色調がより暗く,前・後翅裏面に外横線と横脈紋を欠く(ヤマトカギバは明瞭)。分布:本州・四国・九州。

(下巻,p.4)

なるほど,「裏面」が勝負な訳である。翅を立ててくれれば裏面を確認できるが,カギバガが翅を立てているのをわたしは見たことがない。

講談社『蛾類大図鑑』。「ヤマトカギバ」。

次種と混同しやすいので同定には注意を要する。本州(東北地方北部より),四国,九州,対馬,中国に分布する。

(p.4)

「エゾカギバ」。

前種とごく近縁だが,翅表の色彩はいちように暗い。前種のなかにも色彩のやや濃厚な個体はあるが,青味がかった灰色になる。前種では裏面に前・後翅とも外横線と横脈点を表すが,本種では無紋。北海道,本州,九州,サハリン,シベリア南東部に分布する。関東以西では,本種の産するような平地には見出されないが,東北地方では混生地が多い。

(p.413)

やっぱり裏だなあ。今度見つけたらめくってみようか。案外逃げないかもしれない。


現在使えるのは分布状況。苫小牧のような道南でどこまで妥当するかは疑わしいが,ヤマトカギバは北海道に未分布となっている。

今のところは,道内の昆虫リストである「苫小牧研究林」内コンテンツ「苫小牧研究林で採集されたガ・チョウのリスト」,「千歳市HP」内「ちとせの動物(しゅべつじゅん)」のいずれもヤマトカギバを確認していない。

とりあえずヤマトカギバはいないか,いたとしてもレアであると判断。とはいえ,めくらないと断定はできない。


ヤマトカギバNordstromia japonicaが中緯度系,エゾカギバNordstromia griseariaが北方系であることは,「Lepidoptera and some other life forms」内「Nordstromia」の分布地図を参照されたい。

エゾカギバ

06年8月30日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。前翅長17mm。

■学名は…

学名はNordstromia grisearia

属名は,1943年と比較的新しく起こされたもの。そのためかどうか,どうやらドイツ語系が由来らしい。「北+基質・間質(あるいは絨毯?)」?

 ※違うなあ。おそらく人名由来。

種小名は「灰色+〜の性質を持った」。ヤマトカギバと混ざっているのではなかろうか。

○『原色日本蛾類大図鑑(下)』;保育社,1971

○『日本産蛾類大図鑑』;講談社,1982


( 08年02月17日)


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