ムラサキエダシャク Selenia tetralunaria (Hufnagel)

シャクガ科Geometridae エダシャク亜科Ennoniae

ムラサキエダシャク

06年5月12日,苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。温泉施設看板で。


せれにあ てとらるなりあ。

この学名の響きの優美さを教えてもらったのは虫@ふたばのスレから。意味は分かりやすい。

「Selenia月の女神セレネ」+「tetra4つの/lunaria月の」。名前だけなら大変な美形である。

4枚の翅それぞれに小さな三日月模様がある。この4つの白色紋が明瞭で,前翅頂(前翅の先端)の赤褐色(紫?)であることから他のセレニア属の蛾と区別できる。


春夏の2化の蛾だが,まだ他の蛾があまり出てきてない頃の春の蛾の印象が強い。

前翅長は20mm。翅を半開きにして止まるので,遠目には小さな枯葉の花が咲いているように見える。

ムラサキエダシャク

同年同日。同じ日に2頭来ていてこれは上とは別個体。ちょっと寄りすぎて花に見えない。


いかにもたおやかな学名なのだが,実物は太くごつい。

ムラサキエダシャク

同年同日。

周囲のユスリカ類を圧して巨人めいている。このくらいの迫力がないと夜の世界の女神などやってられないのだろう。


横から。2枚目の個体。これも恰幅がよい。毛深い。まだ北海道の5月の夜は寒いのである。

ムラサキエダシャク

同年同日。半開きなので外縁のピントが逃げてしまっている。


せっかくだから勉強。北隆館『大図鑑』から引用しておこう。お暇な向きはアカデミックな記述と画像とを比較されては。

波状に屈曲する外横線を境として,内側は暗く,外側は明るい色。横脉上の三日月紋は前後翅にあり,前翅頂には内側が半円形の紋がある。春型は大きくて,夏型よりも外半が白っぽい。前翅長:春型18〜23,夏型15〜20mm。(T巻,p.222)

夏型はこちら。

ムラサキエダシャク

06年8月6日,苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。駐車場看板。

なるほど少し小振りだ。前翅長15mmちょうどの枯葉の花。

この個体は触角の櫛歯が顕著ではないので♀と思われる。


せっかくだからこの個体の別アングルも。

ムラサキエダシャク

同年同日。フラッシュが強すぎたか。


夏型は春のにくらべて体毛のモフモフが少し足りないように感じるのだが。

○日本産蛾類大図鑑T,講談社

○原色昆虫大図鑑T(4版);北隆館


(07年12月24日記)

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