05年10月9日。苫小牧市高丘,緑ヶ丘公園。体長10数mmのカメムシ。
チャイロクチブトカメムシは苫小牧の公園の葉っぱの上で最もよく見かけられるカメムシと言ってよい。第一印象は「平べったい」。顔つきはご覧の通り,例えばエゾアオカメムシの「泣き顔」とは違って,なかなかとぼけた味わいがある。
ところが,このチャイロクチブトカメムシ,獰猛なハンターである。「とぼけた顔して番場蛮」である。サシガメの層の薄い北海道では,そのニッチにがっちり食い込んでいるといえる。
06年10月9日。苫小牧市高丘,緑ヶ丘公園。上とは別個体である。
毛虫を捕食。毛虫が暴れていなかったところを見ると,すでに死んでいるかマヒしているのだろう。サシガメの類は毒液(消化液兼用)を注入するというから,チャイロクチブトカメムシもそうかもしれない。
幼虫だって負けていない。
06年8月26日。浦河町西舎,うらかわ優駿ビレッジアエル。
これも毛虫である。毛虫芋虫を捕らえていることが多い。好んでいるのか,捕らえやすいだけなのかは分からない。もちろん贅沢をいえる身分ではなかろうが。農文教『カメムシ図鑑』では次のように述べられている。
山地の樹上で生活し,おもに鱗翅類の幼虫を捕食すると思われる.飼育中にはキベリネズミホソバ,モンシロチョウ,イネヨトウなどの鱗翅類やヤナギルリハムシ,ハバチ類などの幼虫を捕食した. (p.237)
飼育者がどうやってキベリネズミホソバの幼虫(食草はコケ類である)を手に入れたのかはよく分からない。
学名はArma custos。属名は「兜,鎧」。今の若者にはかえって「アーマー」と言った方が通じるかもしれない。種小名は「番人,守備隊」である。このカメムシが葉を食い荒らす毛虫芋虫の天敵であることは古くから知られていたようだ。
もっと若齢の幼虫が大物を仕留めたところ。
05年8月13日。苫小牧市樽前,錦大沼公園。暗いので補正したら画像の荒れが目立ってしまった。虫を撮り始めの頃のコンデジでの撮りなので限界。
最初に見つけた時がこの状況。獲物はクルミハムシである。口吻をがっちり差し込んで吊り下げている。このまま後ずさって,上に引き上げる。馬鹿力である。
05年8月13日。苫小牧市樽前,錦大沼公園。同一個体。
斜め後ろから近づいてブスリとやったものと見える。通り魔みたいなものだ。幼虫にして口吻はすでに脚並に太い。サシガメならまだ「針」という感じなのだが,チャイロクチブトカメムシはもっと暴力的である。尖った杭をぶち込むイメージだろうか。「肉棒をぶち込む」の方がもっと適切だと思うのだが,別の意味で取られる可能性があるので自粛しておく。
この後,カメラに撮られているのがどうも嫌らしく,引きずったりぶら下げたりしながらどんどん樹の上の方へ行ってしまった。
06年9月17日。苫小牧市樽前,錦大沼公園。
コンクリート屑のようなものが沢山ついた個体。「虫@ふたば」での情報によれば,こういう具合にゴミが付いてしまうことはよくあるらしい。何かを分泌しているのだろうか。しかしそれにしても葉っぱの上にいる時にはきれいなのだが。
06年5月10日。苫小牧市高丘,錦大沼公園。
これは春の個体。チャイロクチブトカメムシは成虫越冬をするので,これは越年組である。なるほどだいぶんくたびれている。
幼虫の見られるのが8月だから,逆算して産卵が6〜7月頃。秋には新成虫が出てくる。秋のかなり遅くまで見られるので,他の越冬カメムシのように集団で隠れ家に引きこもって冬越し,ということではなさそうである。
個人的には「孤独なハンター」であって欲しいという気持ちがわたしにはある。
○『日本原色カメムシ図鑑』;全国農村教育協会
(07年8月25日,11月24日改稿)
yyzz2;虫画像 虫よもやま