クロマルカスミカメ Orthcephalus funestus Jakovlev

カスミカメムシ科 Miridae

クロマルカスミカメ

06年7月22日,苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。道路っ端のヨモギの上である。

この画像は♀。

クロマルカスミカメとは「黒丸の霞亀」ではなく,「黒い/丸い霞亀」の意だろう。

横からのアングル。丸っこい,愛らしいスタイルだ。このカーブは野菜の茄子?

クロマルカスミカメ

同年同日。

体調は5mm弱。事前知識がないと,甲虫のハムシ(葉虫)ととっさには区別できない。

カメラの液晶の拡大画面ではじめてカメムシだと気付いた次第。

もちろん顔を近づけてよくよく見れば触角も脚も前翅も甲虫のものではないのだろうが,その頃には向うは逃げてしまっているに違いない。

わたしは4枚撮ったところで逃げられた。(ノД`)。

画像では表面の毛が反射してゴマ塩状に写っているが,眼視ではもっと黒っぽい。かくして一層ハムシに見える。北隆館の『大図鑑V』の説明は次のようなもの。

黒色でにぶい光沢をもち,黒色毛と伏臥した灰白色扁平毛を散布するが,この扁平毛は甚だ落ち易い。(p.98,強調引用者))

なるほどこういう具合に説明するものかと感嘆。野外の眼視ではなかなかそこまで分からない。余裕もない。現場で確認できるのは表面がツルピカでないところまでだろうか。

「毛が落ち易い」云々は標本からの経験と推測される。

学名はOrthocephalus funestus

属名は「ortho正しい,真っ直ぐな(オーソドックスのオルト)+cephalus頭部」。意図はよく分からない。概して属名は謎っぽいものが多い。

種小名は英語のfuneral(葬式)と同根の語で「不吉な,痛ましい」。このカメムシの色合いに喪服でも連想したと見える。

そういうネガティブな先入観を抱いてこの虫を探してみてもきっと面白い。わたしは和名の「クロマル」にはむしろ愛嬌を感じるが,どうだろうか。

オルトケファルス属は北方系のカメムシで,日本にはこのクロマルカスミカメ1種のみだという。九州以南には分布していないらしい。(全農教『カメムシ図鑑2』,p.131)。


ところでこのカメムシは♀♂で形が違う。♂はこっち。

クロマルカスミカメ

05年7月1日,苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。

これはイタドリの葉っぱ。まだ虫を撮り始めて間もない頃のコンデジ画像である。(今後,もっと上手く撮れたら差し替える予定)。

雌雄で形が大きく違うのはカブクワが典型で昆虫では別段珍しくない。カスミカメでは♀短翅,♂長翅の組合せが他に幾種かあったりする。

♀がハムシなら,♂はさしずめ「ハバチ(葉蜂)」か「ハエ」に見える。

とは言っても,あのハチ特有の,いらいらと何かを探しているような歩き方ではない。カメムシの,例の,のたのたした歩み。


掲示板で「ヨモギがあれば見つかる確率が大きいです。」というアドバイスを受けた。

一度出会った虫とは,奇妙にもう一度出会ってみたい。以来,ヨモギは割合と気になる草になっている。

○原色昆虫大図鑑 V(4版);北隆館;1945

○日本原色カメムシ図鑑 第2巻;全国農村教育協会;2002


(08年1月18日修正)

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