キバラヘリカメムシ Plinachtus bicoloripes Scott

ヘリカメムシ科 Coreidae

キバラヘリカメムシ

05年10月9日。苫小牧市樽前,錦大沼公園。

カメムシは個性あふれるグループで,美しいのもいれば,いかにも愛嬌のあるものもいるのだが,キバラヘリカメムシは端的にお洒落で格好いい。

スタイルもコーディネートも隙なく決まっていると思う。黒っぽい虫は沢山いるのだが,こういうダンディーなのはそうはいない。


さぞかし目立っているだろうとネットで検索をかけてみる。ファンもいるかも知れない。出てくる出てくる。やっぱり認知度が高い。成虫の画像も,幼虫のそれもある。

イラストまであった。「むしのしゃしんしゅう」さんのところのイメージ画。カメムシ系のこういった絵(もちろん大好きです)は稀少である。なるほどハイソックスだ。

わたしは「粋な悪党紳士」を連想したりする。海賊盛んなりし頃ですな。

また,「虫ナビ」さん(虫の音がするので注意)の解説文では「本種の黄色と黒の縞模様や先端が赤い触覚を見ていると工事現場を連想させる」とのコメント。これも卓見である。


上から見たときは「キバラ(黄腹)」よりも脚の白が目を引く。学名"Plinachtus bicoloipes"の種小名は「2色の脚」だ。「(学)名が体を表す」ことはあまりないのだが,キバラヘリカメムシは珍しくよく分かる。(属名はまだ調べがついていない)。


キバラヘリカメムシ

同年同日。大きさはまあ中くらい(15〜16mm)。カメラを引くとこんな感じ。


北隆館『昆虫大図鑑』。

背面は黒褐色,結合板は黄と黒の縞,背面は黄色または黄緑色で黒紋をもち,脚は黒褐であるが腿節中央部は幅広く黄色である。触角第2・3節は円筒形であるが第3節の先端部はわずかに扁平。前胸背側縁には細く側板の黄色部が見え,側角はやや扁平になって直角をなして突出する。マユミ・ニシキギなどの樹上にすむ。

(p.83)

同定に困るカメムシではないのでそんなに詳しい説明はいらないのだが,プロの観察するポイントがよく分かる。写真を撮る人間は往々にしてあまり観察していないものである。

脚は白く見えるのだけどなあ。標本からの記述?


キバラヘリカメムシ

同年同日。


全農協『カメムシ図鑑』。

背面は黒褐色で,腹面は黄褐色.脚は黒褐色で,各腿節の基部2/3が黄褐色。前胸背にするどい棘がある個体と,棘のない個体がある。(…)
ニシキギ,マユミ,ツルウメモドキなどの植物の実を好み,他の植物で発見されることは少ない。(p.204)

褐色ずくめだけど仕方ないかあ。

「実を好み」とのこと。そういう画像もネット上に散見できる。「珍獣の館」さんのところの「ニシキギの実にしがみつく」etc.。

このキバラヘリカメムシは,いわゆる「種子カメムシ」で成長や性成熟に種子の養分を必要とするのかもしれない。小さな木の実に幼虫が群がっている様子はそんなことを考えさせる。

その他にも幼虫期に肉食を必要とするカメムシもいるらしいから,要するに植物の汁がいかに栄養に乏しいかということなのだろう。

アワフキやヨコバイみたいな小型サイズのものはともかく,一定以上のガタイのあるものは植物の樹液だけでは育ちきれないに違いない。セミの幼虫時代の長さはその食生活の貧しさに理由があるのかもしれない。ミミズとか捕食すればいいのに。

○『原色昆虫大図鑑V』;北隆館

○『日本原色カメムシ図鑑』;全国農村教育協会


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