セダカオサムシ  Cychrus morawitzi Gehin

オサムシ科 Carabidae

セダカオサムシ

06年6月18日。苫小牧市樽前,錦大沼公園アルテン。


平日の昼間は労働しているので,どうしたって虫撮りは夜になる。フクロウじゃないんだし暗いところでは眼が利かないから,灯火へ来る虫がターゲット。街灯の下でうろうろしているわたしのカメラの餌食になるのは地面に降りている蛾たちだ。

そこに時々甲虫類が紛れ込む。このセダカオサムシも灯火下で出会ったもの。もっとも,この虫には灯火に集まる性質はなさそうだから,夜だというのでノコノコ出てきたのだろう。

セダカオサムシ

同年同日。あまり素性の良い虫には見えない。

サイズは10mmちょい。はじめはゴミムシだと思った。よく見ると体型が明らかに違う。背中が妙に盛り上がってトレーラーを引いているようなスタイルである。「セダカオサムシ」の所以。寒地系の虫で,北海道のオサムシの中では最小。


このオサムシについて,保育社『原色日本甲虫図鑑 2』の描写が詳細を極める。現在品切れなので引用してしまおう。

セダカオサムシ

同年同日。

黒色で微弱な暗銅光沢がある。頭部は細長いが頸部は短く後方に向かって太くなる。頭楯は平滑でときに微細点刻があり,長く,前縁は深く湾入する。前頭は強く密に点刻され,複眼間に横溝がある。前胸背板はほぼ心臓形,側縁は細いが強く平均的に隆起し,中央部に1剛毛があり,後角は鈍角,背面は粗大点刻におおわれ,後方で強く傾斜して圧下され,基部凹陥は横溝状。上翅は卵形〜長卵形で強くふくらみ,背面は前胸背板よりも高く,後端は急に細まり,後方の傾斜は側面から見ると凹弧状。上翅の彫刻は三規的で間室はたがいに融合する不規則な瘤隆起列からなり,一次間室はつねに他より幅広く長い瘤状で側方および後方では強く隆起する。前胸背板側片,胸側板および上翅側片は強く密に点刻される。(…)(p.14)

虫を語るにも,色々な語り方がある。この圧倒的に過剰な用語は一般人の中で像を結ばないが,おそらく形態に親しんでいる専門の人にはよく分かるのかもしれない。


セダカオサムシの主食は小型のカタツムリであるという。気象庁のHPで調べてみると当夜の湿度は90%を超えている。カタツムリ日和の夜だったのだろう。

ところでカタツムリなんてどこにでもいるし,いくらでも捕食できそうなものだが,実際は相当に稀少資源らしい。

カタツムリ食のオサムシ類の一部、例えばマイマイカブリに至っては幼虫期は2齢までに減少し、しばしば1齢期に小型のカタツムリを1個体、2齢期に大型のカタツムリを1個体、合計大小2個体のカタツムリを捕食するだけで蛹となる。そのため、羽化して活動を開始したばかりのオサムシの成虫は体は十分大きいものの体内はスカスカな状態であり、卵巣なども未発達な状態にある。そのため、繁殖には成虫期の摂食による栄養補給が大きな意味を持つ。(Wikipedia「オサムシ」の項

カタツムリはできるだけ節約しなければならないんだな。沢山いるように思うのだが。

セダカオサムシはどうなのだろう。こちらはそもそもガタイが小さい。小さいカタツムリで充分に違いない(むしろ大きいものは狩れないだろう)。

この虫,もう少し大きかったり,色が鮮やかだったりすればもっと面白かったはず。分布が北に寄っていることもダメ押しになって,ネット上の情報は多くない。

こういう個性のあるスタイルは個人的には好きなのだが。遠目にコモリグモみたいだとか,形がキモチワルイとかいう話は完全無視。

○『原色甲虫図鑑 2』;保育社


back top