ミドリオオキスイ  Helota cereopunctata  Lewis

オオキスイムシ科 Helotidae

ミドリオオキスイ

06年6月17日。苫小牧市高丘,緑ヶ丘公園。1cm弱の虫である。

緑ヶ丘公園にはトイレが2つあって,丸太組みのロッジ風の作りをしている。その奥の方のトイレの外壁がなぜか虫に好かれていて,ノコギリカミキリがよくいるし,ハズレでもハサミムシやザトウムシが貼り付いている。わたしは密かにこのトイレを「特異点」とよんでいる。

このミドリオオキスイもこの「特異点」に出現した虫。

クリーム色の絵の具をちょいちょいと無造作に垂らしたような4つ星が目立つ。顔つきも邪気がなくてなかなかよろしいと思う。


学名はHelota cereopunctata。属名はスパルタの隷属民身分の「ヘロット」に由来すると思うのだが確証はない。違っているかもしれない。

種小名は「触角+まだらな」。うーん。むずかしいぞ,解釈が。

和名は「緑+大+木吸い」。ケシキスイムシ(芥子木吸虫)科やキスイムシ(木吸虫)科の虫(たいていが3mm±)よりも大きいからだろう。

ミドリオオキスイ

同年同日。

さて図鑑調べ。北隆館『昆虫大図鑑U』。

黒色で緑銅〜銅赤色に光り,体下は側部を除き黄赤色,触角・腿節の端部を除く大半も同色。頭は密に点刻されるが中央後半ではやや粗,胸背の点刻は両側で粗く,正中部後半は点刻を欠き微細点刻を粗布する。側縁は凹凸がある。上翅は粗点刻列を具え,黄色紋円は周縁が凹む。 (p.197)

描写を比較してみよう。図書館に行ってメモってきた,世界文化社『世界文化生物大図鑑 昆虫U』(なかなか油断できない図鑑である。購入予定)。

体は黒色で銅色から緑銅色の光沢をおびる。触角と腿節の先端部をのぞく大部分,体下面の大部分は黄褐色。頭部,前胸の背面は粗大点刻やや密によそおい,前胸背板の正中部後方では点刻を欠く。上翅は点刻列をそなえ,中央の前後に各2個の黄色の円紋をもつ。成虫は6〜8月に出現し,おもに山地に生息し,樹液に集まる。 (p.136)

体下の黄色部分の指定のわかりにくさはいい勝負。しかし,世界文化社本の生息地・樹液の明記は技ありといったところ。後者に軍配が揚がりそうである。「昆虫ゼリー」で飼育できるのでは? などと余計な想像力をかき立てさせるのは,図鑑の持つ大切な役割だと思う。

実は体の下面の色には気付かなかった。

ミドリオオキスイ

同年同日。

側面から見ると,なるほど腿半分が赤い。

もっと平たいような印象を持っていたが,あらためて見ると結構厚みがある。樹皮潜りが専門ではないようだ。


このミドリオオキスイ,ネット上では同じ科の「ヨツボシオオキスイ」に比べると圧倒的に情報量が少ない。Googleでヨツボシオオキスイ530件に対して,ミドリオオキスイは19件である(07/04/08時点)。

珍しいのか地味なのか。個人的にはもっと人気が出て欲しい虫である。

○『原色昆虫大図鑑U』(4版);北隆館

○『改訂新版 世界文化生物大図鑑 昆虫U』;世界文化社


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